ラスカル・ジムに所属していたM田さんが、ご家庭の事情により退会された。
M田さんは、若い頃にケガをして右腕麻痺の重傷を負った。
それから数年、どうしても格闘技をやりたいとラスカル・ジムに入門。
右腕だけでなく、他にも身体のコンディションが良くなかったM田さんだが
可能な日は、必ずジムに来て人一倍たくさんの汗を流していた。
利き腕だった右腕が使えなくても強烈な左ストレートを打ち、
バランスがとりにくいはずだが、十分に相手にダメージを与えれるキックを習得。
数年前になるが、そんな彼にリングに上がるチャンスが訪れる。
ある大会でセミプロとのエキビジョンマッチだ。
常日頃から選手への安全面に最重点を置くラスカル会長であるが、
練習の熱心さや試合をしたいという熱意に押される形で「OK」を
出したのであろう。
それからは、ラスカル会長と特訓の日々。
片腕でのディフェンスの方法や左のパンチから蹴りへのコンビネーションなど
実戦向きの練習へと切り替わった。
そして当日、着々と試合への準備が始まり緊張が走る。
右腕をバンテージで固定する時に少し震えているのがわかった。
「これが、したかったんやろ!」と声をかけると
「ハイ!」と大きな声で返答、ようやくスイッチが入った。
試合は、相手選手もM田さんに試合の緊迫感を楽しんでもらおうと
M田さんを転倒させる程ビシバシと打ってくる。
M田さんも練習したコンビネーション繰り出す展開。
2Rをフルに戦いぬき会場からは、大きな拍手が渦巻いたことは、
鮮明に覚えている。
ある意味で、私が観たベストファイトのひとつといえよう!
数々の苦難を乗り越え、練習を重ねてリングに上がったM田さんは、
忘れてはいけないラスカルジム伝説のファイターだ!
退会前、M田さんから届いた挨拶のメールには、
「もっと前にでないとダメでした!」と。
いやいや十分前に出てましたよ!M田さん!!
ラスカルジムの若い奴らは、
「練習ができる!」「試合ができる!」だけでも
ありがたいと思わねば。